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房一は、行儀よくまだ冠を頭にのつけたまゝの小谷と練吉と並んで板切れの上に坐つていた。
彼はもう少しで最も善い友人に向ふやうに考へごとを打ち明けるところだつた。
「いつたい、今日は何ごとかの」
と、呟き、房一に向つてしきりとうなづいていた。
感心したやうに呟くと、房一はくるりと向ふむきになつて歩き出した。
「これからどちらへ?」
「さうだ」
そのとき、女房に命じて、温泉を加熱する装置を施してもいいか、ときかせると、
「早く早くつたつて、もうお支度はちやんとできてますわ。あなたが遅くかへつて来といて――」
と、房一が進み出た。
「まあ、それあ――」
鬼倉は低い声で、はじめてぢつと相手を見た。が、それつきりだつた。動きもしない。徳次は何故ともなく一寸ひるんだ。が、又、
房一は無意識に微笑しながらその眼を迎へた。正文はそこに、医者といふよりはまだ世間慣れのしない弁護士のやうな男が、土饅頭を思はせるやうな円まつちい顔を一種恭々うやうやしげな面持でかしこまつているのを、その厚いふくれた唇が不器用な微笑を浮べているのを見た。それは何となく可笑をかしみのあるものだつた。