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    「やあ」

    そのとき、女房に命じて、温泉を加熱する装置を施してもいいか、ときかせると、

    「さうか、――そんなに何もかも、こつちでして貰つてもえゝか」

    あの坊主は前からあんな頭をしていたのかしらん。――さう云へば、子供の時分いつしよに遊んでいるとき見たやうに思つた。――練吉はそんなことを考へていた。

    別に会ふ気がなかつたから、と云ふ代りに、

    房一は、行儀よくまだ冠を頭にのつけたまゝの小谷と練吉と並んで板切れの上に坐つていた。

    今泉は面喰つてこれも徳次の眼の中をのぞきこんだ。二人の間には恐しく判りにくいものが突然はさまつたやうに思はれた。

    練吉はもうさつきから殆ど一人でぐいぐいやつているにもかゝはらず、むしろ青い顔だつた。

    「もうこんなに暗くなつているのにね、何してるんでせう」

    「このまゝでは責任者を出さなくてはならなくなる。手落ちは向ふにあるとしてもですよ」

    「どうだ。起きられるか」

    その日もやがて夜となって、夏の温泉場も大抵寝鎮まった午後十二時頃になると、隣の座敷で女の軽い咳の声がきこえる。もちろん、気のせいだとは思いながらも、私は起きてのぞきに行った。何事もないのを見さだめて帰って来ると、やがてまたその咳の声がきこえる。どうも気になるので、また行ってみた。三度目には座敷のまん中へ通って、暗い所にしばらく坐っていたが、やはり何事もなかった。

    「やあ、君か」

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